通販、とくにECの場合、ショップサイトが顧客の接点であるため、Web以外のコンタクトポイントに手が回りにくくなりがちです。

しかし、実店舗を含めた流通業というジャンルでビジネスをとらえると、完全オンラインの接点が最適というわけではなく、電話のコミュニケーションも意識する対象になります。
あくまでショップは流通経路であるため、顧客体験はお客さま主観の総合的な印象で決まります。

とくに顧客単価の高いジャンルのネットショップの場合などは、電話サポートが有効なケースが多々あります。
電話対応をビジネスに生かすポイントは、「電話ならではの双方向コミュニケーションを支えているか?」という点です。

ECにおける電話問い合わせサポートとは

TELによる双方向コミュニケーションといっても、ショップから売り込みをかけるということではありません。
電話対応の基本は、お客様の知りたかったかたちで情報提供することです。

ECでは商品の充実により情報量が自然と多くなるため、じっさいにはショップサイトに記載してあるようなことであっても顧客は「電話で聞いた方が確実」と考えるケースが多々あります。
このような場合、「確実な受け答えで聞きたかったことを答えてくれた」という体験が信頼感を創出します。

経営上は事務的な応対に過ぎませんが、この点は通販ビジネスでは重要です。
EC・通販は店舗で購入するよりも不透明感が強い(目の前に物がない、店員がいない)ため、レスポンスが確実であることでも帰属性を創出できる余地があります。

また、この受け答えの流れで電話注文を受け付けられれば、顧客から見てオンライン購買プロセスの手間を省けるメリットがあります。
電話注文を受けるにはオーダー管理をオンラインからの出荷業務、物流オペレーションと合わせる必要がありますが、受注機会は広がります。

マニュアル化促進によるレスポンス向上

顧客からの質問は、納期や返品・キャンセルなど購入の流れに関するものや、商品内容に関する質問など、ある程度ジャンルは決まっています。

前述のような信頼性をねらう対応品質のためには、これらのFAQをマニュアルとして整備しておくことが有効です。
マニュアル改訂は業務オペレーションの一貫として組み込むことが重要で、顧客からの実問い合わせをもとに、より問い合わせ意図に沿った回答を準備していくことで継続的にCS品質を改善できます。

また、商品説明のポイントとして、各商品に何か1点「売りポイント」を決めておくことで、粗探しからの意識転換を図りやすいというコツがあります。
何か顧客の意図に沿わない点のある商品であったとしても、「粗悪な商品だ」と思われるよりも「これは自分が目的とする商品ではない」と思ってもらえる方がショップの品格を維持しやすいものです。

業務そのものはコールセンター・電話代行も

ネットショップ開業当初こそ、発送業務から電話対応まで自分たちで手がけることが多いものの、ビジネスの成長に伴ってアウトソース・サービスは活用していくべきでしょう。

コールセンターや電話代行などの業者活用のメリットとしては、対応品質のバラつき低減や、要員採用管理の手間削減を期待できます。
専業の企業であれば基礎的な対応教育により受け答えの底上げを図っていますし、自社でコールセンター業務を手がけるとなると、採用や教育、スタッフのためのオフィス増床などの実務コストが拡大していきます。

ECビジネスには、マーチャンダイジングという情報戦の主戦場があるため、業務オペレーションに足をとられない体制づくりも重要なポイントになります。
電話対応の関わり方としては、前述のとおり顧客に提供すべき情報のマニュアル作りを主導するポジションが適切な立ち位置と言えます。

CRM情報を経営に生かす

「顧客からの生の声は重要」とはよく言われることですが、再確認に値します。
とくにECの場合では、接点がショップサイトだけになると、サイト行動の数と率が顧客情報の主体になります。

これらは自社ビジネスの”森”を表現していますが、改善すべき個別の”木”に関するディティールが失われがちとも言えます。
ビジネス改善の具体的なヒントは顧客との直接の対話による個別のストーリーからの方が得やすいものです。

とくに、購買数の少ない成長初期のECビジネスでは”森”のサンプル数も少ないため、その背後にどのような問題があるのか大手よりも読み取りづらいネックがあります。

顧客電話対応にはクレームも含まれるため、ともすれば減らしたい業務と考えてしまいがちですが、具体的なアクションの裏には往々にして潜在的な構造問題が潜んでいます。
そのため、明示的な顧客要望は個別具体的に確認する習慣が成長するショップ運営には必要なのです。