アクセス解析は重要だがすべてではない

いうまでもなくネット通販は流通の新業態であり、ショップサイトの行動をアクセス解析から知るという手法はECならではの新分野です。

ただし、ECだからといってアクセス解析が主な分析ツールであるとは限りません。
アクセス解析がとくに有効な分野は、購買に至らなかった商品の落ち率とその要因分析のヒントです。
たとえば、その商品がじつはそもそも死に筋であった場合など、アクセス解析以外から知るべき経営情報も多くあります。

アクセス解析は重要なツールですが、すべてではないのです。

商品に着目するアプローチと顧客に着目するアプローチ

サイト上の導線の不備を別とすれば、ECであっても古典的な売れ筋分析が有効です。
流通ビジネスの古典的な分析手法には、大きく分けて、(1)商品に着目するアプローチと(2)顧客に着目するアプローチがあります。

(1)商品分析の初歩的な例は売れ数ランキングで、売れている商品を単純によく見られているページに掲載するという素朴な手法でも売り逃がしは相当防げます。
(2)顧客分析からは、売れ方の偏りを知ることで顧客コミュニケーションのヒントを得られ、各ページの企画を何にすべきか、販促メールの打ち方をどうするかの材料を得られます。

商品分析はABC分析による品揃え検証の費用対効果が高い

商品の売れ筋ベースの経営分析は、基礎的なABC分析を定期的に実行することから始まります。
ABC分析は商品の売れ行きランキングを作り、上位(ABC商品)・下位を知ることです。

通販にもパレートの法則はある程度作用しており、売れ行きには偏りがあります。
このうち、上位のものに着目し、時間をかけて深く考えることで、自社ビジネスの現状の理解が進みます。
下位の商品については深く考えることを止めると同時に、改廃の決断をタイムリーに行なっていくことが重要です。
流通ビジネスは、売れ筋を伸ばし死に筋をクローズしていくプロセスの繰り返しであり、このサイクルが滞留すると成長が止まったり逆回りし始めたりします。

顧客分析はバスケット分析とリピートを知る

ECならではのデータソースとしてアクセス解析以外に、顧客別の購買データを日常的に取得できる点もポイントといえます。

顧客が買った商品からターゲティングするCRM手法もありますが、経営戦略に生かしやすいのは匿名のバスケット分析です。
顧客ごとのバスケット(何が同時に買われているか)を把握することで商品提案の精度が高まります。
インストア・マーチャンダイジングのように連れ売りしている物の組み合わせからカテゴリーを推定してショップサイトの特集企画に活かせます。

また、時系列のCRMデータ分析を行うリピート分析も重要です。
多くのコンシューマービジネスでは新規購買への投資をリピートで回収するモデルに落ち着くことから、リピートの構造に詳しくなることが企業成長と連動しています。
リピートの動向から販促のタイミングとメッセージを策定することで、より効果的な利益構造を生み出せます。

オペレーション過多ならアウトソースを活用

このように、ECビジネスは「顧客を知る」ためにすべきことが多くあります。

一方、EC運営には、発送業務などの物流オペレーションや顧客サポートなど、付帯業務も多くあります。
日常の仕事に追われていると「失敗・トラブルが少なかった」ことが業務レポートになってしまいかねません。

成長は「売れるロジック」から生まれるものですから、オペレーションに忙殺されて本業のプロセスに取り組めていないのであればアウトソーシングの導入を早急に検討すべきです。