EC・通販を含めた流通業の採算向上のひとつのポイントに「在庫管理の効率化・改善」があります。「在庫のムダを省くことでコストが下がる」と言うことは簡単ですが、具体的にはどのように取り組むものなのでしょうか。

今回は、ネットショップの在庫管理改善を業務と関連させて検証します。

在庫に関わるロスを具体的に理解する

流通業における在庫の不効率から来るロスとして、具体的には以下のようなものが挙げられます。

・死に筋在庫の抱え込みによる廃棄損
・ストック方による地代の空費
・ストック不足による売り逃がし

死に筋在庫については、売れると見込んだ商品が売れなかった、というケースが多く、流通業という業態にはつき物のロスと言えます。
死に筋要因を除く、ストックの過多・不足については、需要ペースに対する入荷・在庫水準のミスマッチが原因となります。

死に筋は早期検出、早期圧縮を心がける

まず、売れ行きの読み違いについては、必要悪と考えるべきでしょう。
在庫ポートフォリオの中に、売れ筋と死に筋があり、売れ筋が広がっていけば問題ありません。
無理に死に筋を撲滅しようとすると、売れ筋の探索リスクをとれないこととなり、長期的に見るとジリ貧になりかねません。
死に筋の対応で重要なことは「早めに気づいて在庫を圧縮する」ことです。
流通業は回転(=出荷)から利ザヤが生まれる業態ですから、倉庫に在庫が滞留していると地代だけ消化して、新たな商品ポートフォリオを制限する弊害があります。
死に筋の検出については、在庫そのものというより、受注リストの単品管理を通じて意思決定できる問題です。

在庫水準の適正化は在庫把握から

死に筋以外の在庫水準の過多・不足については、バルク仕入れによる単価の仕切りの要因もありますが、入荷日間で切らさない在庫を持つことが基本形となります。
在庫水準を考えるうえで、意外と見落としがちなのは、「現在の実在庫は思っているほど合わない」という点です。
日常業務で把握している在庫は、WMSなどを活用して入荷・出荷取引を日々さしひきした「理論在庫」で認識していますが、理論在庫は実在庫とは異なります。
システム外の各種業務イベントの誤差が累積してズレていくものなので、在庫水準を一定の精度で把握したい場合はひんぱんに棚卸することが有効です。
とくに、店舗で品切れが思いがけず続いたり、変に在庫が積み上がってしまう商品が出てきたときには見直しが必要なサインと言えます。

在庫から採算のヒントを得る

また、棚卸とは直結しませんが、倉庫の現物ストックを見に行くことで、経営のヒントを得る手法もあります。
倉庫の在庫はショップ経営の1側面を表していますから、目につく商品をもぐら叩きのように対策していくことで極端なロスを低減することも可能です(ABC分析のような考え方)。
また、日々の売上報告からは「モノ」のイメージは持ちにくいものですが、現物を見ることでスペース効率(商品サイズ→地代)に対する意識を向上できる機会も得られます。

まとめ:在庫管理も情報戦

言うまでもなく流通業は情報戦です。
ただし、多くの場合、商品の話題性には目が行っても倉庫在庫に目を向けることは少ないと言えます。商品ポートフォリオは市場ニーズに合わせて組み替えて行くものである以上、当然、倉庫内の在庫構成も柔軟に変わって行くべきです。

移ろいゆくものの管理は、ひんぱんに観察することが有効です。
在庫管理を効率化するためには、まずは現物に関心を持って観察し、気づいたことから対処する、というアプローチが意外と効果的なのです。