物流アウトソーシングをご検討されるうえで、一番重要で、かつ難解なのが、外部に委託する場合の費用(コスト)のとらえ方です。

「入荷料」「出荷料」「保管料」といったものは比較的理解がしやすいかと思いますが、「デバンニング料」や「管理費用」といった特にご経験者ではない限り、一見、わかりにくい項目が並んでいるのが通常かと思います。さらに、同じサービス内容であっても、倉庫会社・発送代行会社によって、表現が変わってくるため、経験者でもない限り、なかなかサービスレベルをあわせて、コストを比較するのが難しいのが実情です。

ここでは、物流アウトソーシングにかかる費用について簡単に触れるとともに、見るべきポイントについて簡単に説明したいと思います。

「トータルコスト低減」がチェックポイント

物流アウトソーシングのメリットはトータルコストを抑えることです。トータルコストは、後述の各費用項目を積み上げた金額になります。大きく分類すると、入荷系・出荷系・保管系・付帯費用に分かれます。

見積もりを見比べる際のポイントは、自社の業務のうちボリュームの多い項目・特殊な作業を要する項目が何か?に着目すると費用ウエイトの高いものを手早く見分けられます。

1.物流アウトソーシングにかかる一般的な費用

一般的に、物流アウトソーシングは、人と場所、マテハン(マテリアルハンドリングの略。
棚やフォークリフト、台車、ベルトコンベヤーと呼ばれる器具備品類)、情報システムといった要素から成り立つサービスです。そのため、各社各様ではありますが、提供するために必要な要素を調達するためのコストに着目して、それぞれの課金方法を定めることが多いようです。

以下では、代表的なものをいくつか見てみましょう。

1)保管料または使用料

読んで字のごとく、お客様の在庫を保管する費用です。スペースに応じて坪あたり月額〇円と決まるケースもあれば、1パレットあたり1期(注:期とは、月を数期(10日ずつ3分割する3期制が代表的)にわけて、それぞれの期にかかった費用を合計したもの)あたり〇円、という表現で課金される場合もあります。個数や荷物の容積に応じて課金する変動費的なケースもあるようです。
在庫回転に応じて、どのような費用体系をとるのがよいかを検討すべきといえますが、一方で期中の在庫の動きをリアルタイムでとらえるのは難しい実情もあり、変動費的な費用体系を提案できるサービスは限られていて、月の使用スペースや3期制のようなやや変動的な費用体系をとる場合が多いようです。

2)入荷料または入庫量、入荷検品料等

これは、物流アウトソーシングを委託するネット通販事業者等の荷主から送られた在庫を受託する側の倉庫会社・発送代行会社が受け取り、倉庫内の所定場所に保管するまでの業務です。

委託する側と受託する側、在庫という資産の授受になるため、事前に委託する荷主から、荷物の種類や数量・重量、到着予定日、送り状番号といった情報を受託する倉庫側に知らせたうえで、受託する側の倉庫が、到着した荷物を受け取り、数量を確認して、所定の棚に保管したうえで、実際に到着した荷物の数量等を報告するという業務の流れになっています。
なお、ここで荷物を預け入れる際の業務としてデバンニングというものがあります。これはコンテナで運ばれた荷物をコンテナから取り出す作業になり、別途工数がかかるものであるため、発生した場合のオプションとして別途見積もりがされます。

入荷は上述のように、在庫という資産を適切に管理するための出発点です。どこまで正確性を追求するかにより、コストが変わってきます。箱を一度開けて、商品の点数を数えて、さらに破損がないかチェックして、ということを要望すると、在庫管理という点では高い精度になりますが、一方でコストが高くなります。逆に、到着した箱ごと保管し、特に中身を数えたりせず箱やパッキングリスト記載の数量をもってまずは実績を返す方法もありますが、在庫管理の精度は落ちる分、コストは安くなります。

入荷料は、その数量に応じて人を手配するため、ほとんど1個ないし1箱〇円のような変動費によるチャージとなっています。

3)ピッキング料、梱包料、出荷料等

委託者である荷主からの指図(指示)に基づいて、保管されている場所から商品を取り出し(ピッキング)、出荷するための作業場にもっていき、資材(段ボールやビニール袋)を組み立てて、資材の中に指示された商品を入れ、納品書等を入れて梱包し(梱包料)、伝票を作成して貼り付け、出荷できる準備を整える業務を言います。
預けている商品点数(アイテム数)が多いと、倉庫内を指図されたアイテムを求めて倉庫内を移動する距離が長くなることもあり、会社によっては事前のヒアリング時にアイテム数と平均的なセット数(受注あたりの商品点数)を聞いたうえでお見積りをしたり、ピッキング料の算定にあたって、3ピックまで、のような制約を設けて、それ以上の場合は別途追加料金をチャージする形態をとったりします。

梱包料は、資材そのものではなく、ものを資材の中に詰め込む作業に対する費用です。会社によっては、ピッキング料や出荷料に含めている場合もあります。また当然ながら、資材そのものの費用は別途請求になることが多いです。梱包料は、梱包するアイテム数や同梱する書類(納品書や請求書、カタログやおまけなど)によって、変化します。ネット通販事業者にとっては、梱包状態(荷姿)が消費者との最初の接点になるため、求める内容と品質を伝えたうえで、見積ってもらうのがいいでしょう。

出荷料は送り状(伝票)を発行し、張り付ける作業に対する業務とそれに対する費用です。伝票発行料という項目を別途設けている場合もあります。
さらに、ギフト対応するためのラッピングやのしの費用といったオプションも対応している会社があります。

4)配送料、運賃等

出荷準備が整った荷物を、消費者の方まで届ける料金です。
特に日本の場合は、クロネコヤマト、佐川急便、日本郵便といった代表的な宅配事業者に委託するのがほとんどです。
物流アウトソーシングをする倉庫会社、発送代行会社によって、懇意にしている宅配事業者も異なり、提示される料金も変動しますが、基本的には、どの宅配事業者を使うか、あるいは使い分けるのか、は荷主であるネット通販事業者から希望を伝えるべきでしょう。どの宅配事業者を利用するのか、によっても消費者の方の評価が変わる部分でもありますので、配送品質と料金を考慮して、ご指定されるのが望ましいと考えます。

また料金は宅配事業者の料金(タリフ)に準拠し、倉庫会社、発送代行会社と宅配事業者が協議して最終的な見積もり提案がされることが多いようです。

5)システム利用料

物流アウトソーシングを受託する倉庫会社、発送代行会社は、倉庫管理システム(WMS/Warehouse Management System)を利用しているケースがほとんどです。

大量の荷物を効率的に裁くためには、システムの利用は今や切っては切り離せませんが、こうしたシステムを利用する費用が見積られる場合があります。
倉庫会社や発送代行会社のシステムの仕様(ルール)に従ってやり取りするのであれば特段問題になることはありませんが、自社のシステムと連携する場合は、初期投資費用や初期費用の減価償却分が固定費としてチャージされる場合もあります。

6)管理費

大規模な倉庫になればなるほど、たくさんの人とモノを管理しなければなりません。チームとして効率的に動くため、倉庫会社、発送代行会社側で管理者が必要となる場合には、管理者をアサインするための費用が必要となります。

2.物流アウトソーシングの費用の見方

概ねよく見積もられる項目と業務内容について簡単に説明してきました。
難しいのは、こうした業務内容と費用項目が倉庫会社、発送代行会社によって表現はもちろん、内容も微妙に異なるものです。