物流アウトソーシングの内容と費用でご紹介しましたように、物流アウトソーシングの費用項目はぱっと見て複雑で、わかりにくく、また横比較が難しいものであることがお分かりいただけたかと思います。

ここでは、こうした費用項目を適正化するための勘所について、ご紹介します。

1.費用項目にメリハリを

ネットショップを運営する通販事業者にとって、注文から消費者まで商品が届くまでの配送サービスは、重要な評価ポイントになっています。とはいえ、サービスの品質が過剰になっても費用が大きくなり、利益が圧迫されますし、費用を極限まで削ると、顧客からの評価が下がってしまいます。
よって、顧客の視点に立ったときに、どのような点を重視すべきか、を明確にして、そのポイントに対応する費用項目とそうではない項目とをバランスよく見極めていくことが要請されます。

例えば、配送スピードを重視すれば(極端なことをいうと、当日配送を行うとすると)、まず配送事業者(ヤマト運輸や佐川急便の当日配送の集荷締め時間)に間に合わせるべく、受注のバッチ(受注処理を締めるタイミングのこと)の数は多くなり、倉庫内作業に負担が増えるために、配送費および出荷料の点で費用が大きくなります。
しかし、貴社の扱っている商材は圧倒的な配送スピードが求められるようなものでしょうか?自社負担にしても、消費者に負担いただくにしても、安く自宅まで届けますが、その代わり配送は翌日、翌々日になる、という考え方もあり得ます。ヤマト運輸や佐川急便、日本郵便といった三大宅配事業者以外にも、サービス品質を制約しつつ、構造的に費用を抑えたエコ配等の廉価な配送手段もあります。

「他社がやっているので」といって追従するのではなく、今一度立ち止まって、配送サービスとしてどこを重視し、どこを削るか、といったメリハリをまずは考えましょう。

2.神は細部に宿る?費用の最適化の勘どころとは?

具体的な費用低減の方法をいくつかご紹介しましょう。

1)入荷方法

入荷業務は、商品を仕入先や工場から委託先の倉庫に送り、倉庫がこれを受け取って棚に入れていつでもピッキング可能な状態にするものです。
費用が大きく左右されるのは、この入荷業務をどこまで厳密にやるかによります。梱包箱から出して、一品一品状態を確認し、不良品を取り分ける、といったことは可能ですが、コストがあがります。逆に、極端な話、梱包箱に記載されている商品明細の数をそのまま計上したり、梱包箱のまま保管しておいたりする場合は、コストはそこまでかかりません。
予め初期不良を除去し、在庫数を正しく把握することを重視するべきか否かで大きくコストが変わりますが、通販の場合は、入荷はそこまで厳密にやらずコストは抑える方向が多いように感じています。もちろん、その場合は、物流アウトソーシング事業者が数を最初にカウントしたわけではないので、仮に入荷時の在庫の数があわない場合には、物流アウトソーシング事業者はその数について保証はしないことになります。

2)保管費用

保管費用については、まず周辺の倉庫の保管料や賃貸不動産の賃料が参考になる場合があります。そのうえで、自社の商材のアイテム数や在庫回転期間等から、物流アウトソーシング事業者が提示可能な保管料計算方式のうち、有利なものを選択すべきです。
通過型(保管はほとんどなく、一括で入荷したものを、受注単位にわけて、数日中に出荷してしまう類型)では、月額固定で床を抑えることはコスト高になる場合もあるでしょうし、保管型(棚に商品のSKUごとに保管して、出荷指示に基づいて出荷する方式)であれば、月額固定のほうが1個あたりのコストに直したとき割安になる場合もあるでしょう。
商材の回転に着目してください。

3)ピッキング

ネット通販事業者のピッキング指示に基づいて、棚から商品を取り出してくる作業になりますが、こちらは作業の導線により工数が変わります。
商品アイテムが少ないような場合だとピッキングのための移動距離はほとんどないでしょうが、アイテム数が多量の場合は、ピッキングに時間がかかることが想定されます。また、1件あたりどれくらいの商品アイテム数が出荷されるか(セット率)によっても出荷能力が変わりますので、例えば平均セット数が3であれば、1ピックいくらの費用ではなく、3ピックまで一律の前提としたお見積りを依頼したり、予め生産側でセットをまとめておいたりする等の対応で適正化していける場合があります。

4)出荷および荷姿

ネット通販にとっては、消費者の手元に届いた時の荷姿が経験を形成するという意味で、差のつくポイントといえるほど重要です。
もし、商品がワレモノである場合、梱包資材を強化しなければならないでしょうし、逆にそこまでの強化が不要なものについては重畳な梱包になるでしょう。また、特定の熱狂的なファンが存在するようなアニメ商材などは、商品の外箱(化粧箱)そのものも商品という認識があるため、少しでも角落ちや傷が入らないようにするため、一般的な考え方では過剰とも思える梱包でも、化粧箱を保護するために必要となる場合もあります。
扱っている商材によって、梱包の強度や荷姿も変わってきます。それに応じた適正なサービスを実現できるよう、出荷および荷姿について優先的に検討していくべきでしょう。

5)配送

3つの大手宅配事業者に委託するのが一般的な日本においては、具体的に各サービスを知り、どの事業者様に委託するかが、ネットショップのサービス品質の評価になるといっても過言ではありません。
その中でコストを最適化するためにできることの一つが、宅配事業者のタリフ(料金表)に則った適正な荷姿を整えることです。日本では宅配事業者のタリフは、サイズとエリア(出荷先エリア)のマトリックスで表現されます。出荷先は一般的な消費財の場合、日本の人口分布に従うと思われますので、あまりコントロールができないのです。しかしながら、サイズは縦・横・高さの3辺合計によって決まります。そして、コストは1センチ単位ではなく、60サイズ(3辺合計60センチという意味)、80サイズ、という形式でサイズによる階段式で決まっていきますので、3辺合計が65センチになるようであれば、できれば60センチに抑えられるような梱包、荷姿を追求すべきといえます。
また、商材によっては、宅配便によらず、いわゆるメール便による方法も可能です。宅配便は、配達先の方の受領印をもらえるという意味で確実な方法ではありますが、商材によっては、受領印を考えることなく、ポストに入れるだけのメール便や定形外郵便のような方法でコストを抑えるということも選択肢の一つになります。

上記以外にも、コストを最適化する方法はたくさんありますが、購入者の方の視点でどこの配送サービスのレベルを厚くするかを考慮し、それ以外の部分は徹底してコストを削るといったメリハリが重要といえます。